こんにちは。現場では図面と現物が食い違っていないか毎回二度見していた、元外構職人の管理人です。宅建業法の35条書面も、実は「誰に説明するか」「何を記載するか」という基本を、事例の形にひねって出題されることが多い分野です。今回はそのひねり方のパターンを、令和4年問28と令和5年問33の2問でまとめて押さえていきましょう。
今回のテーマ:重要事項説明の「事例問題」を攻略する
前回の④・⑭では35条書面の基本(誰に・いつ・誰が説明するか、記載事項)を解説しました。今回はその応用として、以下のポイントが事例形式で問われます。
- 重要事項説明は買主・借主に対してのみ行う(売主・貸主には不要)
- 重要事項説明書の作成は宅建士でなくてもよいが、記名・説明は宅建士の独占業務
- 「交換」契約は「2つの売買」に分解して考える
- 手付金等の保全措置は、記載が必要になる場面とならない場面がある
問題1(令和4年問28)
宅地建物取引業者が行う宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 宅地建物取引業者が、宅地建物取引業者ではない個人から媒介業者の仲介なしに土地付建物を購入する場合、買主である宅地建物取引業者は重要事項説明書を作成しなくても宅地建物取引業法違反とはならない。
- 宅地建物取引業者が、重要事項説明書を作成する際、調査不足のため、重要事項説明書に記載された内容が事実と異なるものとなったが、意図的に事実と異なる内容を記載したものではないため、宅地建物取引業法違反とはならない。
- 宅地建物取引業者は、土地売買の媒介を行う場合、宅地建物取引業者ではない売主に対して契約が成立する前までの間に、宅地建物取引士をして重要事項説明書を交付して説明をさせなければならない。
- 宅地又は建物の取引は権利関係や法令上の制限など取引条件に関する事項が複雑で多岐にわたるため、重要事項説明書は、宅地又は建物の取引の専門的知識を有する宅地建物取引士が作成しなければならない。
解説
選択肢1:正しい
重要事項説明は、物件の概要を伝えるためのものです。したがって、買主にだけ交付・説明すればよく、売主には義務がありません。
| 売買 | 貸借 | |
|---|---|---|
| 説明の相手方 | 買主(売主には不要) | 借主(貸主には不要) |
本肢の宅建業者は「買主」の立場です。買主は重要事項説明書を作成する義務自体を負わないので、正しい記述です。
選択肢2:誤り
重要事項説明書は、適当に作ってただ読めばよいというものではありません。説明の前提として調査義務があり、この調査を怠って誤った内容を記載すること自体が宅建業法違反です。「意図的でなければセーフ」となると、真面目に調査した業者ほど記載ミスが重く扱われるという逆転現象が起きてしまいます。
選択肢3:誤り
売買の媒介を行う場合、重要事項説明は買主に対してするものです。売主に対して重要事項説明をする義務はありません。選択肢1と表裏の関係にある頻出のひっかけパターンです。
選択肢4:誤り
宅建士でなければできない業務(独占業務)は、①重要事項説明書への記名、②重要事項の説明の2つだけです。重要事項説明書の作成自体は、宅建士でない従業者が担当しても問題ありません。
| 作成 | いずれかの宅建業者でも可 |
|---|---|
| 記名 | 宅建士のみ |
| 説明 | 宅建士のみ |
正解:1
問題2(令和5年問33)
宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 甲宅地を所有する宅地建物取引業者Aが、乙宅地を所有する宅地建物取引業者ではない個人Bと、甲宅地と乙宅地の交換契約を締結するに当たって、Bに対して、甲宅地に関する重要事項の説明を行う義務はあるが、乙宅地に関する重要事項の説明を行う義務はない。
- 宅地の売買における当該宅地の引渡しの時期について、重要事項説明において説明しなければならない。
- 宅地建物取引業者が売主となる宅地の売買に関し、売主が買主から受領しようとする金銭のうち、買主への所有権移転の登記以後に受領するものに対して、宅地建物取引業法施行規則第16条の4に定める保全措置を講ずるかどうかについて、重要事項説明書に記載する必要がある。
- 重要事項説明書の電磁的方法による提供については、重要事項説明を受ける者から電磁的方法でよいと口頭で依頼があった場合、改めて電磁的方法で提供することについて承諾を得る必要はない。
解説
選択肢1:正しい
「交換」が出てくると身構えてしまいますが、「2つの売買」に分解すれば整理できます。
- 甲宅地:A(宅建業者)が売主、B(非業者)が買主 → Aが買主Bに重要事項説明の義務あり
- 乙宅地:B(非業者)が売主、A(宅建業者)が買主 → 買主が売主に説明する義務はないので、Aに義務なし
したがって、甲宅地については説明義務があるが、乙宅地については説明義務がない、という記述は正しいことになります。
選択肢2:誤り
「引渡しの時期」は、重要事項説明で説明すべき事項ではありません。これは37条書面(契約書面)の必要的記載事項です。35条書面と37条書面で記載事項が異なる点は、頻出の比較ポイントです。
| 35条書面(重要事項説明) | 37条書面(契約書面) | |
|---|---|---|
| 引渡しの時期 | 記載不要 | 必要的記載事項 |
選択肢3:誤り
手付金等の保全措置は、買主への所有権移転登記より前に受領する金銭が対象です。本肢の金銭は「登記以後に受領するもの」なので、そもそも保全措置を講じる必要がなく、したがって「保全措置を講じるかどうか」を重要事項説明書に記載する必要もありません。
選択肢4:誤り
重要事項説明書を電磁的方法で提供するには、相手方の承諾が必要です。「口頭で依頼があった」だけでは、改めて承諾を得たことにはなりません。承諾は明確な手続きを経る必要がある、という点がポイントです。
正解:1
覚えるポイント:重要事項説明の相手方は「買主・借主」だけ
2問に共通する最重要ポイントは、重要事項説明の相手方です。
- 売買の媒介・代理 → 買主にのみ説明義務(売主には不要)
- 貸借の媒介・代理 → 借主にのみ説明義務(貸主には不要)
- 交換契約は「2つの売買」に分解して、それぞれの売主・買主の立場を整理する
もう一つのポイントは、35条書面と37条書面の記載事項の違いです。「引渡しの時期」のように、片方にしか出てこない事項は、対比表で整理しておくと本番で迷いません。
よくある勘違い
- 「売主にも説明が必要」という勘違い:重要事項説明はあくまで買主・借主保護のための制度です。売主・貸主への説明義務はありません。
- 「作成も宅建士の仕事」という勘違い:重要事項説明書の作成自体は誰でもできます。宅建士の独占業務は記名と説明の2つだけです。
- 「交換は特別ルール」という勘違い:交換契約も、2つの売買に分解すれば通常の売買のルールがそのまま当てはまります。
- 「登記後の金銭も保全措置の対象」という勘違い:手付金等の保全措置は、所有権移転登記より前に受領する金銭が対象です。登記後に受領するものは対象外です。
- 「口頭承諾でOK」という勘違い:電磁的方法による提供には、明確な承諾の手続きが必要です。口頭での依頼だけでは足りません。
まとめ
今回の2問は、いずれも「重要事項説明は誰に対して行うものか」という基本を、交換契約や媒介・代理といった具体的な事例に落とし込んで問うものでした。「買主・借主に対してのみ」という原則さえ揺るがなければ、複雑に見える事例問題も整理しやすくなります。また、35条書面と37条書面の記載事項の違い、手付金等保全措置のタイミングも、あわせて復習しておきましょう。
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35条書面の基本については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
次回予告
次回㉟では、37条書面(契約書面)に関する応用・事例問題を取り上げる予定です。
一緒に学んでいきましょう!
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