こんにちは。現場では「特約書に何が書いてあるか」で後々のトラブルが決まるのを何度も見てきた、元外構職人の管理人です。宅建業法の8種制限は、①クーリングオフ②自己所有に属しない物件の売買制限③手付の額の制限④手付金等の保全措置⑤損害賠償額の予定等の制限⑥契約不適合担保責任の特約制限⑦割賦販売の解除等制限⑧所有権留保等の禁止――という8つのルールの総称です。試験では、これらを組み合わせた総合問題として出題されることが多く、今回は令和4年問43と平成27年問40の2問で、その解き方を確認していきましょう。
今回のテーマ:8種制限の「総合問題」に強くなる
これまでの記事では、⑥クーリングオフ、⑦手付金の制限を個別に解説してきました。今回は、複数の制限が1つの問題に詰め込まれる総合問題への対応力を鍛えます。ポイントは以下の3つです。
- 8種制限は「売主=宅建業者、買主=宅建業者でない者」の売買契約にのみ適用される
- 各制限は独立しているので、1つずつ丁寧に検討すれば怖くない
- 数字(20%、5%、1,000万円など)を条文ごとに正確に押さえる
問題1(令和4年問43)
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として行う売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものはどれか。なお、買主は宅地建物取引業者ではないものとする。
- Aが、宅地又は建物の売買契約に際して手付を受領した場合、その手付がいかなる性質のものであっても、Aが契約の履行に着手するまでの間、買主はその手付を放棄して契約の解除をすることができる。
- Aが、土地付建物の売買契約を締結する場合において、買主との間で、「売主は、売買物件の引渡しの日から1年間に限り当該物件の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保する責任を負う」とする旨の特約を設けることができる。
- 販売代金2,500万円の宅地について、Aが売買契約の締結を行い、損害賠償の額の予定及び違約金の定めをする場合、その合計額を500万円と設定することができる。
- Aが建物の割賦販売を行った場合、当該建物を買主に引き渡し、かつ、代金の額の10分の3を超える額の支払を受けた後は、担保の目的で当該建物を譲り受けてはならない。
解説
選択肢1:正しい
宅建業者が自ら売主となる場合の手付は、特に定めがなくても解約手付として扱われます。したがって、相手方が履行に着手するまでの間、買主は手付を放棄して契約を解除できます。
選択肢2:誤り
宅建業法は、契約不適合担保責任について民法より買主に不利な特約を禁止しています。例外は、通知期間を引渡しから2年以上とするものだけです。本肢の「引渡しの日から1年間に限り責任を負う」という特約は、民法(不適合を知った時から1年)より買主に不利であり、無効です。
| 民法 | 宅建業法(有効な例外) | |
|---|---|---|
| 通知期間 | 不適合を知った時から1年間 | 引渡しから2年以上 |
選択肢3:正しい
損害賠償の予定額と違約金の合計額は、代金の**20%**を超えることができません。2,500万円×20%=500万円が上限であり、500万円ジャストに設定することは問題ありません。
選択肢4:正しい
割賦販売を行った場合、目的物を引き渡し、かつ代金の10分の3を超える額の支払いを受けた後は、担保目的で当該物件を譲り受けること(所有権留保)が禁止されます。
正解:2
問題2(平成27年問40)
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者でない買主Bとの間で締結した売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。
ア Aは、Bとの間で建築工事完了後の建物に係る売買契約(代金3,000万円)において、「Aが契約の履行に着手するまでは、Bは、売買代金の1割を支払うことで契約の解除ができる」とする特約を定め、Bから手付金10万円を受領した。この場合、この特約は有効である。
イ Aは、Bとの間で建築工事完了前の建物に係る売買契約(代金3,000万円)を締結するに当たり、保険事業者との間において、手付金等について保証保険契約を締結して、手付金300万円を受領し、後日保険証券をBに交付した。
ウ Aは、Bとの間で建築工事完了前のマンションに係る売買契約(代金3,000万円)を締結し、その際に手付金150万円を、建築工事完了後、引渡し及び所有権の登記までの間に、中間金150万円を受領したが、合計額が代金の10分の1以下であるので保全措置を講じなかった。
- 一つ 2. 二つ 3. 三つ 4. なし
解説
ア:誤り
手付金は10万円なので、買主は本来この10万円を放棄すれば解除できます。それにもかかわらず「売買代金の1割(300万円)を支払わなければ解除できない」とする特約は、買主に不利であり無効です。
イ:誤り
未完成物件で手付金300万円を受領する場合、代金の5%(150万円)を超えるため保全措置が必要です。保証保険契約を利用する場合は、契約を締結するだけでなく「保険証券を買主に交付してから」でなければ手付金等を受領できません。本肢は「後日」交付している点が違反です。
ウ:誤り
未完成物件では、手付金等の合計が代金の5%または1,000万円を超えると保全措置が必要です。手付金受領時点(150万円)では代金の5%ジャストで不要ですが、中間金受領時点で合計300万円となり、5%(150万円)を超えます。「代金の10分の1以下だから不要」という判断基準自体が誤りで、正しい基準は**5%**です。
| タイミング | 手付金等の合計額 | 保全措置 |
|---|---|---|
| 手付金受領時 | 150万円 | 不要(5%ジャスト) |
| 中間金受領時 | 300万円 | 必要(5%超) |
正解:4(正しいものはひとつもない=なし)
覚えるポイント:8種制限は「誰が・何を・いくつ」で整理する
2問を通じて出てきた数字を一覧にしておきます。
| 制限 | 基準 |
|---|---|
| 手付解除 | 相手方が履行に着手するまで(買主に不利な特約は無効) |
| 損害賠償額の予定+違約金 | 代金の20%以内 |
| 契約不適合担保責任の特約 | 通知期間を引渡しから2年以上とする以外は原則無効 |
| 手付金等の保全措置(未完成物件) | 代金の5%または1,000万円超で必要 |
| 手付金等の保全措置(完成物件) | 代金の10%または1,000万円超で必要 |
| 割賦販売の所有権留保禁止 | 引渡し+代金の10分の3超の支払い後 |
未完成物件と完成物件で保全措置の基準(5% vs 10%)が異なる点は、特に間違えやすいポイントです。
よくある勘違い
- 「特約を定めれば自由に変えられる」という勘違い:8種制限のほとんどは、買主に不利な特約を無効とする片面的強行規定です。業者側が有利な条件を定めても、その部分は無効になります。
- 「保証保険は契約すればOK」という勘違い:保証保険契約を締結しただけでは足りず、保険証券(またはこれに代わる書面)を買主に交付して初めて保全措置を講じたことになります。
- 「代金の10分の1以下なら安全」という思い込み:保全措置の基準は「代金の10分の1」ではなく、未完成物件では「5%または1,000万円」です。数字を正確に覚えておかないと足元をすくわれます。
- 「業者間取引でも同じルールが適用される」という勘違い:8種制限は、買主が宅建業者でない場合にのみ適用されます。業者間取引では適用されません。
まとめ
8種制限の総合問題は、一見複雑に見えても「1つずつ独立したルールを丁寧に当てはめる」ことで十分に対応できます。今回の2問では、手付解除・契約不適合担保責任の特約・損害賠償額の予定・割賦販売規制・手付金等の保全措置という主要な論点をひと通り確認しました。数字の基準(20%、5%、10%、10分の3など)を横断的に整理しておくと、どの組み合わせで出題されても慌てずに対応できます。
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次回予告
次回㊲では、報酬額の制限に関する応用・事例問題(計算問題含む)を取り上げる予定です。
一緒に学んでいきましょう!
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