こんにちは。外構工事の現場でも「これはやっていい」「これは絶対ダメ」の線引きを叩き込まれましたが、宅建業法の禁止事項もまさにその感覚が問われます。元外構職人で、令和7年に宅建試験を一発合格した管理人です。
今回は「業務に関する禁止事項」の応用問題を2問取り上げます。手付貸与、勧誘時のルール、重要事実の不告知など、実務で「うっかりやってしまいそう」なケースが並びます。一つずつ丁寧に見ていきましょう。
問題1:令和3年10月問43(業務に関する規制・個数問題)
【問題】 宅地建物取引業者の業務に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定に違反するものはいくつあるか。
ア マンションの販売に際して、買主が手付として必要な額を持ち合わせていなかったため、手付を分割受領することにより、契約の締結を誘引した。
イ 宅地の売買に際して、相手方が「契約の締結をするかどうか明日まで考えさせてほしい」と申し出たのに対し、事実を歪めて「明日では契約締結できなくなるので、今日しか待てない」と告げた。
ウ マンション販売の勧誘を電話で行った際に、勧誘に先立って電話口で宅地建物取引業者の商号又は名称を名乗らずに勧誘を行った。
エ 建物の貸借の媒介に際して、賃貸借契約の申込みをした者がその撤回を申し出たが、物件案内等に経費がかかったため、預り金を返還しなかった。
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- 四つ
記述ごとの解説
ア(違反する) 「手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為」は禁止されています(宅建業法47条3号)。
| 該当するもの | 該当しないもの |
|---|---|
| 後日払い・分割払い | 代金・手付金を減額/銀行を紹介・あっせん |
本肢の「手付を分割受領する」ことは、まさに信用の供与そのもの。手付貸与の禁止に違反します。
イ(違反する) 正当な理由なく、契約締結を判断するために必要な時間を与えることを拒む行為は禁止されています(宅建業法47条の2第3項、規則16条の11第1号ロ)。
事実を歪めて「今日しか待てない」と告げる行為は、判断のための時間を実質的に奪うものであり、この禁止行為に該当します。
ウ(違反する) 勧誘に先立って、①宅建業者の商号・名称、②勧誘者の氏名、③勧誘目的である旨、を告げなければなりません(宅建業法47条の2第3項、規則16条の11第1号ハ)。
本肢では①の商号・名称を名乗っていないため、宅建業法に違反します。
エ(違反する) 契約の申込みの撤回に際し、既に受領した預り金の返還を拒むことは禁止されています(宅建業法47条の2第3項、規則16条の11第2号)。
物件案内等の経費がかかったとしても、それを理由に預り金の返還を拒むことはできません。
正解:4(ア・イ・ウ・エすべて違反)
問題2:令和6年問42(業務に関する規制)
【問題】 次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定及び「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によれば、誤っているものはどれか。
- 宅地建物取引業者は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。
- 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買の契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、宅地又は建物の引渡しの時期について故意に不実のことを告げた場合であっても、契約が成立したときに宅地建物取引業法第37条の規定により交付すべき書面に当該事項を正確に記載すればよい。
- 「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によれば、売買取引の対象となる居住用不動産において、自然死や日常生活の中での不慮の死が発生した場合であっても、過去に人が死亡し、長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴ういわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等が行われていなければ、宅地建物取引業者は、原則として、買主に対してこれを告げなくてもよい。
- 「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によれば、賃貸借取引の対象となる居住用不動産において、自然死や日常生活の中での不慮の死以外の死が発生した場合であっても、特段の事情がない限り、当該死が発覚してから概ね3年間を経過した後は、宅地建物取引業者は、原則として、借主に対してこれを告げなくてもよい。
選択肢ごとの解説
選択肢1(正しい) 勧誘に際し、利益を生ずることが確実と誤解させるような断定的判断を提供する行為は禁止されています(宅建業法47条の2第1項)。
選択肢2(誤り=これが正解) 「宅地又は建物の引渡しの時期」は、売買・貸借双方の契約における37条書面の必要的記載事項です(宅建業法37条2項1号、1項4号)。
| 37条書面の記載事項 | 売買 | 貸借 |
|---|---|---|
| 引渡しの時期 | 〇 | 〇 |
| 移転登記の申請の時期 | 〇 | × |
37条書面の記載事項について、宅建業者が故意に不実のことを告げる行為はそれ自体が違反です(宅建業法47条1号)。契約成立後に正確な事実を記載したとしても、勧誘時点で不実告知をした違反が消えるわけではありません。
選択肢3(正しい) 居住用不動産で自然死や日常生活の中での不慮の死が発生していても、特殊清掃や大規模リフォーム等が行われていなければ、原則として告げる必要はありません(ガイドライン4(1)①)。
選択肢4(正しい) 自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死(事件性のある死など)が発生した場合、宅建業者は原則として告げる義務がありますが、賃貸借取引に限っては、事案発生からおおむね3年間経過後は告知義務を負いません(ガイドライン4(1)②)。
正解:2
覚えるポイント
- 手付貸与の禁止は「分割払い」も含む:金銭を直接貸すことだけでなく、後日払い・分割払いにする行為も「信用の供与」として禁止されます。
- 勧誘時の3点セット:勧誘前に①商号・名称、②勧誘者氏名、③勧誘目的、を告げる義務があります。1つでも欠けば違反です。
- 預り金の返還拒否は経費を理由にできない:撤回時の預り金は、経費がかかっていても全額返還が原則です。
- 37条書面の不実告知は「後から直せば済む」話ではない:勧誘段階での不実告知そのものが独立した違反です。
- 人の死の告知は「取引形態」と「死因」で判断が変わる:売買では原則告知義務が続く一方、賃貸借は経過期間(概ね3年)で告知義務が緩和される点に注意しましょう。
よくある勘違い
「手付を分割で受け取っただけで、貸したわけじゃないから問題ない」と考えてしまうミスが多いです。宅建業法上は、分割払いや後日払いも「信用の供与」に含まれ、貸付けと同様に禁止されています。
また、「重要事項を勧誘時に誤って伝えても、契約書面に正しく書けば問題ない」という誤解も要注意です。勧誘段階での不実告知はその時点で違反が成立しており、後から訂正しても帳消しにはなりません。
まとめ
業務に関する禁止事項は、細かいルールが多い分野ですが、「相手方の判断を歪める行為」「金銭のやり取りに関する不当な行為」という2つの軸で整理すると覚えやすくなります。焦らず一つずつ丁寧に押さえていきましょう。
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- 手付金の基本ルールについては、⑦手付金の制限をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
- 契約書面(37条書面)の記載事項については、㉟契約書面(37条書面)の応用で復習できます。
次回予告
次回㊴では、宅建士に対する監督処分・登録移転の応用問題を取り上げる予定です。指示処分・事務禁止処分・登録消除処分の使い分けは混同しやすいポイントなので、しっかり整理していきましょう。
一緒に学んでいきましょう!
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